映画応援団「シネマエール東北」 - 東北に映画を届けよう!プロジェクト

各年度の報告

■ 2013年06月13日(木)

岩手、宮城、福島各県の活動報告2012

2011年5月7日からスタートした巡回上映会活動は、多くの皆様からの温かいご支援により2012年度も引き続き、被災地の子どもからお年寄りまで多くの人たちに「楽しい時間」「憩いの時間」「交流の場」を届けることができました。2012年5月には岩手県では通算100回を数え、この活動がスタートした宮古市田老地区の仮設団地で「たろう映画祭」を開催し、多くの方々に丸1日映画を楽しんでもらう事ができました。メッセージ付きの黄色いハンカチも全国から集まり、会場に掲揚しました。100回記念に併せ映画館を使ったイベント「活弁シアター」も開催し、普段なかなか体験することができない活弁付きでの無声映画上映と活弁体験ワークショップも実施、来場者した皆様にとても喜んでいただきました。


2012年の被災地での巡回活動も仮設住宅の集会所などを中心に活動してきました。どこの会場でも「楽しかった!」「久しぶりに映画を観られて良かった」「また来て欲しい」と声をかけられました。集会所という小さな場所ですが、久しぶりに大きなスクリーンで映画を観て、みんなで笑ったり泣いたりと「映画」の楽しさや魅力を感じていただく事ができました。

仮設での生活も長引いきているなか、仮設内でも「格差」が生じてきているのを感じています。仮設住宅の中では、様々な地域から集まっているところも多く、なかなか交流が少ない(できない)人たちもいます。被災地でのイベントも少なくなっていく中で、こういった活動がただ単に映画の上映いう事だけではなく、映画によって、お年寄りが外に出る機会や様々な想いがある人たちが一緒に「集まり」、時間や現実を忘れ「楽しみ」、つながりやコミュニケーションを作り出す「交流」の場として映画上映会となっています。特に秋から冬にかけ寒さの厳しい東北地方では、外での活動も難しい状況ですので、屋内で楽しめる映画はとても良いイベントとなっています。
これまで同様に映画上映の前後でボランティアさん等の協力で茶話会などのサロン活動の他にも、落語と併せて「寄席」も実施し映画だけではない楽しみもプラスして沢山の人たちに喜んでもらうことができました。


被災されたのは仮設に住んでいる方だけとは限らず、在宅者や民間アパート等のみなし仮設にいる方も多く、現在はそういった方々への支援は少ない状況です(把握も難しい事もあります)。仮設住宅での上映会だけではなく、被災地域の公民館などの公共的な施設でも上映会を開催しています。仮設に入っている人、在宅の人、みなしの人、地域外から避難して来ている人、そして直接被災は受けてない地域の方等も含め、そこに住む人たち皆が集まって、交流できる機会にしていきたいと思っております。
大きな話になってしまいますが、「映画」を使って「コミュニティの再生」に少しでも貢献できる支援になれるよう今後も取り組んでいきたいと思います。


その他、映職連との共催での映画館を使った無料上映会や「文化な仕事創造事業」との共催として「みやこほっこり映画祭」を開催。映画館だけではなく市内商店街の空き店舗を利用した「まちなか」で映画を楽しんでもらいました。多くの地域の人たちが映画祭に参加し関わってもらいながら、なかなか映画館まで足を運ぶことができない年配の方や子ども達などの沢山の来場者で賑わいました。商店街や地域の活性化につながる企画だったと思います。この企画は今後共継続して行っていきたいと考えています。

震災から2年が経ち、報道などで取り上げられる事も少なくなりましたが、被災地の復興の歩は遅く、先の見えない不安を抱えながらの仮設や被災地での暮らしは続いていきます。三年目をむかえ、これからますますソフト面での「心のケア」が必要と感じています。皆様からのこれまでの支援に心より感謝いたしますと共に、これからも引き続きのご支援ご協力をお願い申し上げます。


シネマエール東北 岩手県担当
みやこシネマリーン 櫛桁一則

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「シネマエール東北」東北に映画を届けよう!プロジェクトは、多くの皆様のご支援を得て、2012年度を終えることができました。2013年度もまた、シネマエール東北の活動を継続することができるのも多くの方のご支援のおかげです。
東日本大震災から2年を経過し、支援活動を終える団体が多く、ボランティアの数も減少していますが、被災地に映画を届ける「シネマエール東北」の活動を続けることで、いまも様々な面で困難を抱え、我慢を強いられることの多い被災地の人々に束の間でも楽しい時間を過ごしてもらうということに貢献できていると感じています。
被災地は少しずつ、震災前の「日常」を取り戻しつつありますが、文化事業が元に復すまでにはまだまだ時間がかかると思います。シネマエール東北として、いましばらく支援を続けていきたいと思っています。


2012年秋以降も、宮城県で支援活動を続ける様々な団体と協力して、イベントを実施しました。

京都民商との共催 気仙沼・石巻地区支援イベント
気仙沼・石巻で支援活動を続けている「京都民商」との共同イベントでは、京都民商が炊き出しや人形劇を、シネマエール東北では子供向けに人形アニメの名作岡本忠成監督の『おこんじょうるり』を上映、大人向けには「男はつらいよ」などの上映会を開催しました。また本編の上映前には、地域のお祭りの映像や、昔の8ミリ映像を上映、楽しんでいただきました。


名取美田園地区での上映―ダイナムとの共同企画
美田園第一仮設住宅での上映会は5回目になります。以前は軽い喜劇映画の希望が多く、「男はつらいよ」や「釣りバカ日誌」シリーズなどをたびたび上映しましたが、最近では「映画らしい見ごたえのある映画が見たい」という要望があり、今回は『有頂天ホテル』を上映しました。ほかにも、『北の零年』や『鉄道員(ぽっぽや)』を上映してほしいといった希望も出てきています。この日は、クリスマスが近かったので、共催者であるダイナム(名取市に出店しているパチンコチェーン)から、クリスマスプレゼントが贈られました。

ISHINOMAKI金曜映画館  http://www.facebook.com/kinyoueigakan.ishinomaki

「文化なしごと創造事業」の研修プログラムから始まった「ISHINOMAKI金曜映画館」は石巻の社団法人ISHINOMAKI2.0や株式会社街づくりまんぼうと共同で、津波で壊滅的な被害を受けた石巻の中心市街地で定期的・継続的に上映会を実施していこうという企画で、12月に「開館記念フェスティバル!」と銘打ったイベントを実施しました。このイベントでは、映画の上映に合わせて、石巻の復興を応援するため、商店街のCMを作り続けている「石巻手作りCMプロジェクト」の人たちのライブや、株式会社ポケモンによるポケモンの最新作の上映やワークショップ、石巻の食材を使ったレストラン「日和キッチン」による軽食やワイン、ビールの提供なども行いました。
また、3月末には、震災後にできた現代アートのギャラリー「日和アートセンター」との共催で『ハーブ&ドロシー―アートの森の小さな巨人―』の上映会を開催しました。アート好きの方々50人もの方に来場していただくことができ、「ISHINOMAKI金曜映画館」の運営に携わる専従の若いスタッフを常駐させることも決まりました。
ISHINOMAKI金曜映画館は、すでに、2013年度の上映会もスタートさせています。5月のゴールデンウィークには、「いしのまきっず映画館」を開催。中学生・高校生向けには、映画の仕事を体験できるワークショップと『ポテチ』の上映会を開催、中村義洋監督も参加してくださいました。
宮城県での、シネマエール東北の活動は、2013年度も続きます。これからが本格的な「文化の出番」です。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


シネマエール東北宮城県担当
NPO法人世紀アーカイブ仙台坂本英紀


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大震災から約1ヶ月後の2011年4月8日から、NPO法人山形国際ドキュメンタリー映画祭と山形県映画センター/フォ−ラムネットワークは協同して山形県内各地に急遽できた避難所を回る上映会を始動しました。その後、映画関係者の方々と話し合いを経て6月から地域ごとに担当を決めて上映活動を行う「シネマエール東北」に連携して活動を続けました。様々な方の紹介で首都圏や関西圏から駆けつけた多くのボランティアの皆さんの協力をいただきながら、福島県では仮設集宅の集会所や震災被害を逃れた公共ホールや建物で、山形県内では避難してアパートや借家、公営住宅(借上げ住宅)を借りて暮らしている方々を対象とした上映会を行ってきました。

福島県では、2011年に引き続き仮設住宅の集会所等で上映を行いました。「元気が出た」「仮設に来て初めて笑った」「久しぶりに映画を観た」などの感想が多く、いわき市では自治会の方に上映作品の手書き看板を作ってもらい会場を盛り上げていただきました。また、プレパブ校舎で勉強している伊達市の梁川小学校の子どもたちのために夏休み映画会を行いました。2度目となる映画会なので、子どもたちは手書きのポスターや入場券を作り上映の日を楽しみにして待っていてくれました。


他にも「福島こどもみらい映画祭」との連携でいわき市の豊間小学校で野外上映会、原発立地町(大熊町、楢葉町、双葉町、浪江町)の人々が暮らす仮設住宅がある会津若松市で、県立博物館講堂をお借りして夏休み子ども映画会なども行いました。孫を連れて久しぶりに映画を観に来たというおじいちゃんや大勢の親子が集まり盛況でした。小さな子どもや若いお母さんたちからは「子どもといっしょに来たのに自分がほっこりした」「自分も子どもといっしょに楽しめた」といった感想をいただき、楽しい時間を過ごしていただきました。
冬になると例年なく豪雪が続き福島内陸部に行くには片道4・5時間かかることもありましたが、寒さで籠りがちな生活が続く中で、映画を観て喜んでくれる人々の笑顔を思い浮かべなら映画を届けました。


 当初は、仮設住宅の集会所を主に上映会を行っていましたが、みなし仮設世帯には情報がなかなか伝わりにくい状況や、点在している仮設住宅をすべて回るには時間がかかり過ぎることもあり、公共施設や地域の拠点となっている建物に集まってもらう方法も並行して行っています。南相馬市鹿島区のさくらホールでは35mmフィルムによる子ども向けの上映会、福島市街地から離れた高齢者施設ではシニア世代向けの上映を行い、上映後は茶話会を開いて感想や当時観た時の話しに華が咲いて和やかなひとときを過ごしていただきました。

一方山形県では、2012年春から山形市や米沢市には、福島から避難して来ている子どもたちのためにNPOが運営する保育スペースが作られました。こうした場は母親たちの情報交換の場にもなっており、当初は他人同士だった人々の拠り所のひとつとなっています。子どもが小さくて映画館には行けないが映画を見たいお母さんたちの声に応えて「こども未来ひろば」でも上映会を行いました。

 震災から二年を過ぎた今も、山形県内には放射線量の高い福島県内や津波で多くを失った宮城県からの自主避難者が約1万人暮らしています。その大半は若いお母さんと小さな子どもたちで、残してきた家族との二重生活を強いられ、さらに今春からは子どもの進学や就職で離散生活が進む現実があります。
何年続くかわからない不安定な状況で、心を支えられるのは映画、音楽、演劇、絵画などの文化です。  
 私たちは映画を通じて人生の生活の希望となる文化の火を灯し続けながら、心のスイッチが一日でも早く切り替わるためのお手伝い続けたいと思っています。南相馬市小高区の海岸付近は、今も震災直後の風景のままです。東北の復興はやっと端緒に辿り着いたに過ぎません。さらに阪神淡路大震災の例を引くならば三年目が一番辛い時だといいます。全国の映画関係者や文化に携る皆様にこれまでのご厚情に深く感謝申し上げますと共に、引き続き温かいご支援とご協力を賜りたくお願い申し上げます。


シネマエール東北 福島県・山形県担当
山形県映画センター 宮沢 啓

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