■ 2015年06月29日(月)
東日本大震災から4年目、震災の風化が叫ばれる中でも、引き続き2014年度も多くの皆様からの温かいご支援によりまして、岩手県沿岸被災地域での映画上映会を実施する事ができましたことに心より感謝申し上げます。
4年が過ぎ、被災地は幹線道路や大規模防潮堤、高台移転や地盤かさ上げ工事などのハード事業が急ピッチで進み沿岸各地域を訪れる度に風景が目まぐるしく変わっております。復興公営住宅等も徐々にでき、仮設住宅からの移転も始まっており、入居者が減った仮設住宅の集約の話しも聞こえてきます。しかし、岩手県内では仮設での生活で不便なくらしを続けている方がまだ2万2千人(2014年12月末時点)もいるのが現実です。仮設に残らざるをえない人達の生活再建への先の見えない不安も大きくなっています。沿岸部を離れていく人も多く、一度離れた人達もまだ戻って来る状況でなく、人口流出も非常に大きな問題になっています。
この間、被災地域を支えてきた支援団体活動はますます縮小となり、ボランティア活動の数も大きく減少していく中、震災が風化していくことへの不安も大きくなっている状況であります。
仮設等でのイベントも激減していく中、映画を届けるこのシネマエール東北の継続した活動は子どもからお年寄りまで多くの人達に<楽しい時間><憩いの時間><交流の場>を提供することができるとともに、自立して前向きにこれからこの地域で暮らしていく思いの人達にとっても、「映画」がその人達の気持ちに寄り添い、元気づけ大きな「心の支援」につながっていると、ますます実感しているところです。
このシネマエール東北の活動に参加していたボランティアの中からできた、文化・アート系の地域づくり団体の活動も継続しつつあり、本事業に関わらず、協働での映画祭や自主上映活動などができました。映画鑑賞だけではなく、様々なイベントやワークショップも併せて映像文化を通じたまちづくりが少しずつではありますが進んでいるのが、大きな収穫でもあります。
▲鍬ケ崎地区幻灯&映画上映会 早稲田大学+NPOみやこラボ共催
この地域は明治の大津波の際に小学校での幻灯会が行われたことで、参加していた多くの子ども達の命を救いました。鍬ケ崎地区は今回も大震災で大きな被害を受けましたが、子どもが犠牲になることがありませんでした。そういった場所で再び映画の原点とも言える幻灯の実演と映画鑑賞を鍬ケ崎小学校と隣接仮設で企画実施することができた事は有意義な事でした。震災以降、落ち着きが無い子どもも多く、他のイベントが来ても収拾できない事もあったそうですが、映画を最後まで集中して観ている子供達に先生も驚いていました。
▲POKEMON With You ポケモン上映キャラバン ㈱ポケモン×シネマエール東北
2014年度も㈱ポケモンと一緒に新作の上映会を田野畑村、大槌町、大船渡市、陸前高田市の4地区で実施いたしました。被災地上映会は通常旧作が中心なのですが、まだパッケージ化もされていない新作ポケモン上映とポケモン工作ワークショップや着ぐるみピカチュウ登場に、今回も多くの親子連れで賑わいました。
▲第3回みやこほっこり映画祭
冬の東北地方、物理的だけではなく「映画で心からほっこりしてもらいたい」「もっと身近に映画を楽しんでもらいたい」ということでスタートした、みやこほっこり映画祭も3年目も実施することができました。日本アカデミー賞協会からの協力もあり、最優秀受賞作品3本を提供いただき、地域の方々と一緒に実施することができました。映画館で一度上映している作品ですが、「やっぱり映画館で観たい」「何度でも観たい」と、映画祭の中でもこの支援をいただいた3作品は、とりわけ多くの来場がありました。趣旨に賛同いただいたお二人の監督も快く来館いただき、楽しいトークで会場が盛り上がりました。
その他、シネマエール東北×日本映像職能連合共催での支援上映会(「御法度」「探偵はBARにいる」)は今年度も引き続き実施、また、多くの方々に「映画館」で映画を楽しんでもらう事ができました。
5年目をむかえ、昨年同様になりますが、復興住宅や宅地造成が進み仮設住宅の統廃合もますます多くなっていくと思います。避難生活から新たなスタートを迎える人も多くなり、コミュニティ作りが始まります。ハードが整備されていく中で、ますますソフト面での活動が重要になってくると思います。これからが本番となる新たなる地域づくり、地域再生の一助のなるよう、映画という人達が集まる共有空間を通じて、「映画」の力を信じ、もっと映画を身近に感じてもらえるよう、これからも引き続き活動していきたいと思っております。
皆様からのこれまでの支援に心より感謝いたしますと共に、これからも引き続きご支援ご協力をお願い申し上げます。
シネマエール東北 岩手担当
みやこシネマリーン 櫛桁一則
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東日本大震災から4年、シネマエール東北の活度が皆様の温かいご支援によって継続して実施できることを感謝申し上げます。
宮城県内の復興の状況を見てみると、仙台市内の中心部と宮城県内の沿岸部の復興状況には大きな違いや速度の差を感じます。津波の浸水地域と地震による被災との違いは勿論ありますが、仙台市の市街地ではもはやどこを見ても東日本大震災のツメあとは感じられません。復興公営住宅も次々と完成し、新しい環境での生活が始まりつつあります。しかし、沿岸部に目をやると、かさ上げ工事の真最中で復興公営住宅が出来るのはまだまだ先で、多くの人が仮設住宅での生活を続けざるを得ない状況です。
4年目となり、仮設住宅の集会所での上映会の回数はかなり減りましたが、今年度も、北は気仙沼から南は亘理町まで、30回の上映会を開催し、宮城県内の沿岸部の皆様に映画で楽しいひと時を過ごしていただくことができました。
仮設住宅での高齢者向けの上映会では、その地域の昔の様子を撮った8ミリフィルムも合せて上映し、参加者同志のコミュニケーションづくりに役立てています。
地域の「恒例」の文化事業として、シネマエール東北の上映会を実施するところも増えています。気仙沼市の仮設住宅や赤岩児童館、離島の大島児童館、あるいは、亘理町での夏の上映会は2012年から毎年、継続的に開催しています。
● ISHINOMAKI金曜映画館
また、石巻市でスタートした「ISHINOMAKI金曜映画館」は、ほぼ毎月上映会を開催することができるようになり、スタッフの育成も進み、地元の文化活動として定着しつつあります。
2011年以降、毎年7月末に開催されている大規模なイベント「ISHINOMAKI STAND UP WEEK」の前夜祭の野外上映会は定番企画となり、2014年の上映会には400人をこえる子どもたちに集まってもらうことができました。
また、10月にははじめての特集上映を企画し、黒澤明監督の映画を35ミリフィルムで4本上映、映画ファンに楽しんでいただくことができました。震災前から活動していた「石巻シネクラブ」のメンバーの選定作品(『冒険者たち』)や常連の映画ファンのリクエスト作品(『ひまわり』)の上映は大好評で、オールド映画ファンのみならず、若い人たちにもクラシック作品をみてもらうことができました。
最近の上映会には、震災後に開店したレストラン「日和キッチン」が毎回オリジナルのパンを販売して、上映会の雰囲気をもりあげてくれています。
2014年3月には子どもたち向けのワークショップも実施しました。震災後、石巻の中心部の商店街を応援しようと、オリジナルのCMをつくってきた「石巻手作りCMプロジェクト」のメンバーの協力を得て、ISHINOMAKI金曜映画館のCM作りを体験するというもので、短い時間で力作を完成させることができました。
大震災による津波で壊滅的な被害を受けた石巻市の中心部、かつては6館もの映画館があったこの街で、定期的に映画を上映し、町の人が集い、映画を楽しむことができる場を提供するISHINOMAKI金曜映画館の活動は、新しいまちづくりの中で文化事業の意味を考える、重要な役割を果たしつつあります。
宮城県の沿岸部の多くの市町村では、震災の前にすでに地域の映画館が閉館してしまっていました。最も近い映画館まで車で1時間半以上かかるというところが少なくありません。映画館がない町に映画を届ける役割を担ってきたのは、地元の興行者が公共ホールを借りて行ってきた「移動上映」や市民有志による自主上映会です。震災後、これらの活動もすべてストップしてしまいましたが、沿岸部の復興に伴い、少しずつ再開しています。
今後は、継続的にシネマエール東北上映会を実施するようになった団体や、震災前まで上映活動を積極的に展開していた団体との連携を深め、支援をすることで、地域の新しいまちづくり、コミュニティづくりの中で、映画の上映を役立ててもらえるように、活動を続けていきたいと考えています。
宮城県担当
NPO法人20世紀アーカイブ仙台 理事長 坂本 英紀
(一般社団法人コミュニティシネマセンター 事務局長 岩崎 ゆう子)
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映画を通じて笑顔や元気、そして小さな希望の灯を被災地に届けようと始まった映画応援団「シネマエール東北」東北に映画を届けよう!プロジェクトはまもなく満4年を迎えます。これまでの活動で、映画関係者・映画関連団体機関・配給会社各社の皆様をはじめNGO、NPO、市民団体、大学関係者の方々、そして被災地の仮設住宅自治会や福祉関係団体、行政機関の皆様など数え切れないほどの方々に色々な処でお世話になりました。
3年目を過ぎた頃から支援団体が次々に姿を消していく残念な状況もありましたが、新たに出会った団体の方々と新しい関係を作りながら活動を続けることができましたことは、多くの皆様の後押しとご支援の賜物です。この場をお借りして心から厚くお礼申し上げます。
福島県では、災害公営住宅の建設、沿岸部から内陸への鉄道線路や駅の移転建設、高速道の前倒し工事など目に見える復興がある反面、除染作業で取り除かれた土が黒い大きな袋に入れられて石垣のように野積みされたままの風景は今もいたるところで見られます。仮設住宅に住んでいた子どものいる家族の多くが、学校や職場に近い町場のアパートに移り、住宅を新たに購入した人もいます。結果的に高齢者がほとんどを占めることになった仮設住宅では、震災後心を病んでしまった人のケアや、病気を抱えている人々のために、仮設住宅の一角にサポートセンターや診療所が作られて福祉士、保健師、医師の皆さんが毎日忙しく活躍しています。その中には、新潟県から応援のため単身で来られている保健師の方もいました。
一方、山形県では2015年1月15日現在4,429人の福島・宮城・岩手の避難者の皆様を受け入れています。(これは東京都、埼玉県についで三番目です)一年前には5,708人だったことから約8%1,279人が就職、進学、帰還などで転出したことになります。福島に帰還された方、子ども進学に合わせて首都圏に移住した方、長野や関西圏に引っ越した方など様々ですが、先の見えない放射能の問題が行く手を大きく遮っていることは明らかです。
私たちは、月一回の「支援者のつどい」に参加して情報交換や団体相互の協力などを話し合い、そこで知り合った県内外の団体や紹介していただいたグループと一緒になって、避難者や被災地の皆さんが「映画」を通じて少しでも前に進むことができるよう「心の復興」のお手伝いを今後も続けて行きたいと思っています。
◆伊達市立梁川小学校 復興支援上映会
仮設校舎で勉強を続ける子どもたちのために毎年続けています。校長先生やPTAの皆さんともすっかり顔馴染みになり、卒業して中学生になった子どもたちもやって来て一緒に見る小学校の「恒例行事」になった上映会です。
◆日本アカデミー賞受賞作品の上映
一昨年国の登録有形文化財になった南相馬市原町区にある劇場朝日座で、日本アカデミー賞最優秀外国作品賞を受賞した『レ・ミゼラブル』を日本アカデミー賞協会のご協力で上映。「朝日座を楽しむ会」の皆様にも終日ご協力いただきました。
◆宮城県の離島(網地島)で上映会
島の看護師さんからのメールで話しが始まり、配給会社やISHINOMAKI金曜映画館など様々な方々のご協力で実現しました。当日は、現在住んでいる島民の約1/4が集まった小さな島の大きな上映会になりました。当日は島外から駆けつけた人もいました。今夏は廃校になった小学校のグランドで野外上映会をやってほしいとリクエストをいただいています。
◆ポケモン最新作の上映会
南相馬、相馬市ではポケモン最新作の上映会を実施。まだDVD化されていない「ポケモン」の最新作を上映はもちろんですが、着ぐるみとの記念写真撮影、ぬり絵やアップリケを布バックにプリントするワークショップなども人気でした。
◆ビーンズふくしま こども向け上映会
学習支援をしている「ビーンズふくしま」の協力を得て、沿岸部から福島市内に非難している子どもたちを対象に上映会を開催。昨年度は大雪で中止になったので今年再挑戦しました。グリーンイメージ国際映像祭からもご協力をいただきました。
福島県の南相馬市角川原の仮設住宅では、監督の要請で『夢は牛のお医者さん』を上映して大変喜ばれ、新潟・上越に避難している知人にもこの映画の事を知らせたいという嬉しい言葉もいただきました。バラバラになった地域や家族がまた少しずつですが繋がり始めたことを感じた瞬間です。他にも共に支援活動をしている山形国際ドキュメンタリー映画祭の独自企画に協力して福島県内4ヶ所で実施した「子ども映画ワークショップ」では子どもたちから沢山の笑顔をもらいました。
今後も「映画」の持つ力を信じて私たちは活動を続けて参ります。
ご支援をよろしくお願いします。
シネマエール東北 福島県・山形県担当
山形県映画センター 宮沢 啓
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