映画応援団「シネマエール東北」 - 東北に映画を届けよう!プロジェクト

上映会レポート

■ 2011年07月23日(土)

宮城県  鮪立(しびたち)児童館

九州、四国、近畿に豪雨をもたらした台風6号が運良く東北地方を避けるように太平洋に抜けた後、去る7月23日に、宮城県気仙沼市の唐桑半島にある鮪立(しびたち)児童館で、『カールじいさんの空飛ぶ家』の上映会を行ないました。


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「鮪(マグロ)」と書いて「しび」と読むのは初めて知りましたが、「シビマグロ」という鮪の種類があるそうで、それで「鮪」を「しび」と読んでいるようです(地元の人が魚の鮪のことを「しび」と言うことはないそうですが)。


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鮪立は唐桑半島の山の方に位置し海を一望できる場所なのですが、同じ半島の沿岸部には小鯖(こさば)という、やはり魚の名前を持った地区もあり、ここは今回の津波で相当な被害を受けたそうです。
 
この唐桑半島のビジターセンターには津波体験館があるくらいで、津波に対する防災訓練なども行なわれていたといいます。

僕は九州に住んでいるため、津波がくることなど考えたこともなかったのですが、東北では、かつてチリ地震などで津波被害に見舞われた経験から、津波に対してはそれなりの意識があったことを、今回初めて知りました。

そして、そうでありながら、あれだけの被害となったことに、改めて今回の津波の巨大さを思い知らされました。


さて、映画上映会ですが、運良く天気は曇。
閉め切った部屋が熱くなりすぎないか心配したのですが、気温もそれほどあがらず一安心でした。

「シネマエール東北」の宮城県の上映会を受け持っていただいているNPO法人20世紀アーカイブ仙台の方といっしょに上映の準備をし、やがて時間が近付くと、子どもたちが、やって来ました。

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上映室とは別の部屋では、長野の松本から車を飛ばしてやって来た松本CINEMAセレクトの宮崎さんと杉本さんが「子ども映画教室」のさまざまな面白グッズや風船アートを、早く来た子どもたちに披露して、人気を集めていました(子どもだけでなく大人もずいぶん楽しんでいたようです)。


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そしていよいよ上映です。部屋は、60人くらいの子どもたちでぎゅうぎゅうづめ。
そこでまずは上映前のあいさつを。「おじちゃんはどこから来たと思う?」と問いかけると、「センダーイ!」「トウキョー!」と、みんな元気に反応してくれます。

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「実は、キュウシューのオオイタケンから来たんでーす」。僕もすっかり「映画おじちゃん」になって、あいさつしました。

こうして映画が始まったのですが、それから30分後、思わぬことが起きます。
劇中、カールじいさんの家が大量の風船に吊られて空に舞い上がって、ふと見ると眼前に真っ黒な雲が現れて、という場面。家が雲に飲み込まれた瞬間に、ゴゴゴゴッという音、そしてガガガガッと、部屋中が揺れ始めたのです。

映画は暗雲を映した画面のまま中断され、僕はあわてて辺りの窓や戸を開けたのですが、先生は「大丈夫よお」と声をかけて子どもたちを落ち着かせます。ほどなくして地震は収まりましたが、まさかこんなところで地震が来ようとは夢にも思っていなかったので、ほんとうに驚きました(地震慣れしている子どもたちよりも、むしろ僕のほうがビビっていたと思う)。

それにしても、映画の場面と地震がシンクロした、あまりのタイミングの良さ(?)にもびっくり。上映は5分の中断を経て再開し、無事終了となりました。


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この日の上映は、僕にとってはもちろん、子どもたちにとっても、「忘れられない上映会」になったと思います。
「映画を大勢でいっしょに見る」ことは、その時、その場でしか味わえない、いわばライブ感覚の体験であり、そんな体験を子どもの頃に持つことで、未来の映画ファンは育ってゆくのだと思います。

この上映会をきっかけに映画ファンになった子どもがいたら、きっとその子は、30年後、40年後にも「映画の最中に地震が来た」体験を、大切な「映画の思い出」として語ることでしょう。

今回の「シネマエール東北」は、映画を届けることを生業とする僕らにとって、「映画を届けることの原点」を振り返る貴重な機会でもあります。これからもまた、東北の皆さんに映画を届けに、ぜひ出かけてゆきたいと思います。


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大分シネマ5  田井 肇

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