映画応援団「シネマエール東北」 - 東北に映画を届けよう!プロジェクト

上映会レポート

■ 2014年07月25日(金)

石巻STAND UP WEEK 前夜祭野外上映会『ドラえもん 新・のび太の大魔境』

2014年7月25日昼過ぎ。石巻でバスを降りると、とたんに強い日差しと風に包まれた。ほんのりと塩の香りのする風はさらりと心地よく、東京のじめっとした暑さに辟易としていた身が解放されたような気分になる。

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今夜は、石巻市中心商店街で野外上映会が開催される。伝統行事の川開き祭(7月31日、8月1日)の前に一週間に渡って行われるSTAND UP WEEK 2014の前夜祭イベントだ。2011年東日本大震災後に始まったSTAND UP WEEKも、今年で4回目。「石巻を再び強く立ち上がらせる(STAND UPさせる)」ために市民と国内外のクリエイターやボランティアが始めたイベントは年を追う毎に大きくなり、今年も、一箱古本市やキャンプ、まちコン、ファッションイベントなど多彩だ。さて、野外上映会にはどのくらい人が集まるだろうか。街中の空き地にお客さんを集め、建物の壁に「ドラえもん」を投影して映画を楽しんでもらおうというこの企画、観客にとっても企画者にとっても面白い映画体験になるはずである。

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まだ外が明るい午後3時。立町通り石巻商工会議所隣接駐車場に上映会場の設営を始める。壁への投影距離を探り、プラスチックのベンチを並べていく。たくさんの子供たち大人たちが座れるように、首が痛くならず足もほどほどに伸ばせるように、微調整しながらベンチを置く。上映作品のバナーを吊り下げて、あとは日が落ちるのを待つばかりだ。

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午後5時近くになると、徐々にと人が集まってきた。小学生らしき男の子は、「この映画もう観てる」といいながら座席を確保。一度観た映画でも、野外上映はまた別の楽しみなのだろう。そのうちに続々とお客さんがやってきて、まさかの定員超え。急遽、別のイベントで使う予定だった人工芝マット(3ロールも!)を敷き、ベンチに座れなかった人たちには、ピクニック気分で映画を見てもらうことになった。投影できるほど暗くなるまであと少し。その間、子どもたちにはちいさなドラえもんグッズが配られる。午後7時スタートの予定だったが、太陽は予定どおりには沈まない。皆ただのんびりと日が暮れるのを待っている。

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すっかり日が落ち、いよいよ『ドラえもん 新・のび太の大魔境』の上映が始まった。日没後は涼しく外で過ごすのにちょうどよい。まだ梅雨の最中であることを忘れてしまいそうだ。子供も大人も皆食い入るように映画を見ている。入場無料、出入り自由な空き地での野外上映会なのに、不思議なくらい途中で席を立つ人が少ない。今年は天気が幸いしたのか、昨年より多いおよそ400人が街中に集まり上映会は盛況のうちに幕を下ろした。

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翌朝、石巻の大嶋神社に登る。道端で地図を広げていたところ自転車で通りかかった地元の人に勧められたのだ。悠々と流れる北上川を眺めながら、彼が問わず語りに語った震災の経験を思い返す。あの日、彼はどんな思いでこの丘に逃れたのだろうか。真っ青な空と朝の光が照り返す水面が美しく心に刺さる。近々新しい堤防ができ、この川の景色は消えることになっている。これからも街の姿は日々変わっていくだろう。夏の夜に心地よい風に吹かれながらわいわいとみんなで映画を見た記憶が、街が立ち上がっていく力になっていくことを願ってやまない。

野外上映会スタッフ 加藤

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