映画応援団「シネマエール東北」 - 東北に映画を届けよう!プロジェクト

上映会レポート

■ 2014年10月19日(日)

南相馬朝日座『レ・ミゼラブル』

秋晴れの清々しい朝、久しぶりの朝日座に到着しました。原町区の街なかを
機材を積んだ車で移動していると、そこかしこに今回の『レ・ミゼラブル』
上映を告知するポスターが貼られていました。これは多くの観客の皆さんに
集まっていただけるのではないかと、いやが上にも期待が高まります。

朝日座レミゼ1019_2.JPG

全編が迫力のある歌とドラマに溢れた『レ・ミゼラブル』。大作感のあるこ
の作品を映写する上では、画づくりにも気をつかいます。重厚なドラマを引
き立てる映像美が、薄っぺらな画になってしまっては台無しです。今回はデ
ジタル上映でしたが、35mmフィルムを思わせる奥行きを持った画に少しでも
近づけようと、プロジェクタの調整を念入りに行いました。この作業中に気
づいたのは、朝日座の主役であるスクリーンが持つなんとも言えない"味"の
ようなものでした。昔ながらの布製スクリーンは、昨今のシネマコンプレッ
クスにある最新のシルバースクリーンと比べると、当然見劣りしてしまいま
す。ですが、プロジェクタの光を当てると余分な反射光を絶妙な案配で吸収
し、しっとりと落ち着いた画を見せてくれるではありませんか。年期が入っ
たスクリーンは、ともするとくすんだようにも見えてしまいますが、それが
逆に功を奏し、平板になりがちなプロジェクタの画に深み与えてくれたよう
です。朝日座がこれまで培ってきた歴史のなせる技というところでしょう
か。朝日座の底力を見た気がしました。

朝日座レミゼ1019_3.JPG

上映開始直前、嬉しいサプライズがありました。なんと本作の主演である
ヒュー・ジャックマンからの南相馬市の観客の皆さんにあてた応援メッセー
ジの読み上げです。日本アカデミー賞協会事務局長の富山省吾さんが東京か
ら持参してくださいました。その旨が伝えられると場内から「おおーっ!」
という大きな歓声。ハリウッドスターからの心遣いに溢れた言葉の数々に、
皆さん、神妙な面持ちで聞き入っていました。

朝日座レミゼ1019_1.JPG

映画もクライマックスに差しかかり、ジャン・ヴァルジャンのコゼットに捧
げる絶対的な愛と永遠の別れーーこの名シーンに場内のいたるところですす
り泣きが上がります。映画館全体で感動を共有する一体感。これぞまさに映
画の醍醐味だなぁと、わたしもほっこりと気持ちが温かくなりました。どっ
ぷりと作品世界に浸っていただけたに違いありません。上映後、会場を後に
する皆さんが、潤んだ瞳を拭いながら「感動した!」「素晴らしかった!」
と晴れやかな声を上げていたのがその証となりましょう。

映画の中の登場人物たちと共に時を忘れて生きるひととき。そこから得られ
たものが何であったかは、映画をご覧になった皆さんの表情にはっきりと表
れていました。今回もまた、映画が持つ根源的な力に触れた上映会となりま
した。


シネマエール東北 福島担当 日下部克喜

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